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年金生活者がたくさんいる社会ってどうなの

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スペインでは100万人以上が2つ以上の年金をもらっている

スペインで、100万人以上が2つ以上の公的年金を受給しているという記事を読みました。

Pensiones: Casi un millón de personas perciben ya dos o más pensiones públicas. Noticias de Economía

これはスペイン語の記事なので、日本語で大雑把にまとめると、

年金を受給されている人の11%が、2つ以上の公的年金、たとえば自分の老齢年金と亡くなった夫の寡婦年金、を受け取っています。スペインでは、自分が長年働いて得た老齢年金は、他の年金、寡婦年金や障害年金などと併用して受給することが可能なのです。

ただし、現在、年金を受け取っている世代は、専業主婦が多かった世代です。自分で働いて長年にわたり年金を払い続けてきた女性というのは少数派でしょう。フランコ独裁が終わった1975年以降、社会構造が大きく変わっていって、多くの女性が外に出て働くようになり、雇用保険をきちんと企業に払ってもらえるようになったのです。

つまり、今、現役で働いている世代の女性たちが年を取ってくると、老齢年金をもらう人の割合がどんどん増えていく。老齢年金は、他の年金と併用してもらえるので、2つ以上の年金をもらう人がこれからもどんどん増えていく。これが、将来的に国の財政を圧迫する可能性を問題視している、ということでした。

 

国のお金で生活する人

でも、この記事の裏には、もう一つ語られるべきことがあって、それは、

かなりのスペイン人が国からお金をもらって生活しているということです。この記事では、たまたま高齢の女性がテーマになってるけど、実際はもっと多くの人が年金をもらっているんです。

 

国からお金をもらって生活するということは、日本もそうですが、

失業保険や生活保護のような一時的なものから、障害者年金、老齢年金、寡婦年金など生涯にわたるものまで様々な種類があります。

こうした年金・支援制度は、お金を稼ぐことが困難になってしまった人たちのための、国のセーフティネットとして機能しているわけですが、中には、もらえちゃってラッキー!という人も混ざっているわけです。経済学でいうところのフリーライダーさんですね。

 

フリーライダーの存在

フリーライダー、つまり、タダ乗り。

こうした公共のサービスやインフラは、それが作られた段階で、一定の割合で存在してしまうフリーライダーを内包せざるを得ないのは仕方のないことです。そうしないと、本当に守らなければいけない人々が、救いの手から漏れてしまうから。

 でもね、でもねー。

いやー、スペイン、タダ乗りな人、多すぎ!

 

日本人って、年金や生活保護の不正受給問題に関しては、結構辛辣ですよね。

誰かが不正受給していると分かろうものなら、メディアやら何やらで社会的制裁までも徹底的に加えてしまう。ちょっとやり過ぎなんじゃね感まである。

 

誰に優しい国?

一方、スペインは…、多分…めっちゃ寛大。すごく寛大。

非難されるのを覚悟でいうと、スペインって良い意味でも悪い意味でも、バカと貧乏人に優しい国だと常々思っています。俺は私はバカだー、貧乏だーって落ち込んでいる人は、ここに来てほしい。色んな意味で、なんか安心できるから。

 

たとえば、私が衝撃だったのが、

恋人に振られて、精神的に参ってしまい、国から障害者年金(もちろん死ぬまで)をもらうことになったという、今も車を普通に運転している34歳の男性

とか。

失恋して年金もらうって何?もう分けわかんない。

 

あるいは、

夏に公営のプールへ行った時のこと。年金をもらっている人って、入場料が割引になるのですが、すごいスピードで歩いてきて、私たちの前に割り込んできた子連れのヤンキーカップル(20代前半くらい)が、堂々と年金者カードを受付に提出してました。夫婦で年金受給…。えっ?、これからプールで泳ぐんだよね、そっか、ふーん。

 

別にね、若くして年金貰っている人を責めるつもりは全然ないんですよ。外から見ただけでは分からない深刻な病気をもっていることだってあるわけだし。外野がとやかく言うことじゃないよね。

ただ、あまりにも、そこかしこにいらっしゃるのを見るとね、色々考えちゃうわけです。スペインの国家財政ってかなり厳しいわけだし、ドイツとかEUの親玉みたいな国からは、しょっちゅう圧力かけられているわけですからね。

 

難しいバランス

だからといって、不正受給を防ぐためと称して、受給資格を厳しくしてしまうと、生活力ない人多いですから、かなりの人が路頭に迷ったり、餓死したりしてしまうかもしれない。

スペインでは、誰かが餓死したというニュースを全く聞きません。実は餓死したんだけど、国が隠しているみたいな陰謀論的可能性は低いので、本当に餓死していないんだと思います。それは、フリーライダーの存在にはある程度は目をつむり、年金受給を寛大にしている背景もあるんじゃないかな、と思います。

もちろん、これがいつまで続くかは分かりません。今年中にスペインの年金基金は底を付くと言われていて、国は基金以外の資金源を模索している状態。それが、借金になるのか、新たな税金を創出するのかはまだ未定のよう。

フリーライダーがわんさかいる一方で、これから起業したい人々にとっては行政が定めた様々な障壁があって(既得権益を守るようにできている?)、すごくやり辛い社会。

私も、正直者が馬鹿を見るのは嫌だと思う一方で、弱者に優しい社会が少しでも続いてほしいなとも思う複雑な気持ちを抱えているのでした。